パン職人の修造 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!前編
このお話は新人の杉本君 Baker’s fightの続きです。
下町の商店街にあるパン屋のパンロンドは今日もお客様が絶えない。お客さんがパンを買って帰ったらまた次のお客さんが来る。
大人気のとろとろクリームパンを成形しながらパンロンドの店主柚木(通称親方)は仕込み中の職人田所修造を見て思ってい
修造が修業に行っていたドイツから帰ってから急にやる気に満ち溢れた職人が増えて
あいつは本当に大したもんだよ。
律子さんと緑ちゃんをおいてドイツに行くって言った時はどうなる
杉本は修造の舎弟みたいだし、江川は金魚の〇〇だな、、、
そこへ電話がかかってきた。親方は人一倍太い指で受話器をとった。
「はい、パンロンドです。」
「初めまして。わたくしNNテレビのディレクターの四角志蔵と申
「へぇ〜、、えっ?うちが出るんですか?」
「はい、
「何をやるんですか?パンのクイズとか?」
「それもあります。勝ち進むと更にテーマがあるんですが、
親方は修造を見ながら言った。
「四角さん!うちに相応しい人材がいますよ。
「本当ですか?全て録画になりますが、
「わかりました。」
「修造君〜!」電話を切って親方は修造に声をかけた。
親方がこう言ってくる時は大体頼み事が多い。
いやな予感しかしない修造は親方を見た。
「来週火曜日に修造と誰かもう1人がNNテレビのパン王座決定戦
「もう決めちゃったんですか?俺テレビとか苦手なんですが。」
人前で何かするとか嫌だな。特に目立つのは苦手だな。
「修造さんとですか?だとしたら誰かもう1人って僕しかいないで
修造と一緒と聞いて気が大きくなって修造の弟子っこの様な江川卓也が立候補してきた。
「
親方はさらっとそう言ってまた仕事に戻ってしまった。
杉本は倉庫に材料を取りに行ってて出遅れて悔しがった。
「え~!江川さ~ん!変わってくださいよ~」
「いやだよ。僕が修造さんと一緒に出るんだもんね。」
そんなやりとりを聞きながら修造は凄く嫌そうにしていた。
うわ、俺どこかに逃げ出そうかな。
そう思いながら火曜日はすぐにやって来た。
修造と江川はNNテレビに向かう車の中で
「なんで俺がテレビに出なくちゃいけないんだ。」
「まだそんな事言ってるんですか?
「お前、、信じられない図々しさだなあ!」
そんなやりとりをしながら2人はNNテレビに到着した。
「うわー!僕テレビ局初めてです。広いなあ。」
ADらしい人に控室に通されて「こちらに座ってしばらくお待ちください。」
自分たちの他に5組いるんだ、、
1番右の2人。あれは北海道のパン屋北麦(ほくばく)
2番目が東北のブーランジェリータカユキの那須田シェフ。
3番目は関東の俺たちパンロンド。
4番目は関西のブーランジェリーサクマの佐久間シェフ。
5番目は中国地方のBBベーグルの田中シェフ。ここはベーグルの種類が豊富で、華やかなベーグルフルーツサンドが人気なんだ。
そして6番目は九州の
「それぞれ持ち味出してる店ばっかだな。」
うちが1番無名かなあと言ってるとディレクターがやって来た。
「どうもみなさんお待たせしました。
パンにまつわる問題が出ますのでどんどん答えて行ってください。
全10問しかありませんので頑張って下さい。
説明のあとスタジオに案内された。1番やる気のない修造はだらだらと最後に
スタジオは広くてセットのところだけ凄くライトアップされていた
「セットの裏側ってベニヤ板なんですね〜」
スタジオのセットはクイズ番組でよく見る1番から6番のマークのあるブースに仕切られていて、2
「このボタンを押すんですね。早押しなんでしょ?」
「そうらしいな。」
ピンポン!江川は赤い丸いボタンを押す練習を始めた。なかなか素早い。
とそこへ、売れっ子司会の安藤良昌(あんどうよしまさ)が真ん中に立って挨拶して来た。「
「あれ、安藤良昌ですよね!芸能人見たの初めてだなあ!」
江川おまえの好奇心は天井知らずだな。
そう思ってると音楽がなり、とうとう番組が始まった。
皆緊張の面持ちで立っている。クイズが始まった。
ジャジャン!
「第一問!
修造はすぐに押したが、
「はい!2番の那須田チーム。」
「ドイツ!」
「正解です。
江川は修造の顔を見た。
あ!ドイツが答えなのに!
修造さんめっちゃ悔しそう!
これ外すか?
「おい江川、
「はい。」
ジャジャン!
「第二問!
ピンポン!
「はい!3番の田所チーム!」
修造が江川にささやいた事を江川が言った。
「酸っぱい生地?」
「正解!パンロンド田所チームにポイント10点!残りはあと8問
ジャジャン!
「第三問!粉の20%から40%程度に同量の水と酵母を混ぜ込ん
また素早く背中を突いて「ポーリッシュ法!」「はい正解!」
次々と答えていき、パンロンドは素早さだけで50点稼いだ。
修造がチェっとなったので、江川はそんな修造を見て、
結果
1位はパンロンド
2位は20点稼いだブーランジェリータカユキ
そして3位は10点のブーランジェリーサクマと北麦パンだったの
ジャジャン!
「問題です。一般的なライ麦の発芽温度は次のうちどれ?1番1℃
タッチの差でブーランジェリーサクマが押した。
「はい佐久間チーム!」
「1番!」「はい正解!おめでとうございます。3位決定!これで
音楽と共に番組は一旦締められた。
ディレクターの四角は控室で4軒のチームを集め「
四角は説明を続けた。
「お客さんの数は300人。
「準備があると思いますので、1週間後、NNパーク広場で行います
「うわ、人気対決ですって。どうするんですか修造さん。」
「絶対勝ってやる!
他の店も同じ様に思ってたらしく早々に全員帰った。
親方は行きと帰りの修造のテンションの違いを見て驚いた。息巻いている。
「江川君、どうだった?今日のクイズ。」
「はい、うちの圧倒的勝利だったんです。
「うへ~!それは凄いね。」
翌日、修造の頭の中は何を作るかでいっぱいだった。
対戦相手は那須田チームのデニッシュかクロワッサン、佐久間チームの惣菜パン、
ああいう屋台だと知名度と看板の写真なんかがものを言うよな。。
カレーやラーメンならなあ、、
そうだ!
カレーパン!
スパイシーで香り立つカレーはどうだろう?
「あ、親方。修造さん何か思いついた様ですよ。」クリームパンの生地を綿棒で伸ばしながら修造を観察していた江川が報告した。
「親方、買い出しに行きたいんですが。」
「
「はい!」
そう言って修造は駅前のスパイス専門店に走って行った。
そこには缶に入ったプロ仕様のスパイスが沢山並んでいる。
「えーと、ターメリック、クローブ、オールスパイス、
「沢山入れると気になる味ですが、
「はい。」
「それともう一つ。
「どうもありがとう!」とお礼を言って買い物をして、スーパーでトマトと生姜とニン
次に肉屋に行った。うーん、
修造はある肉を買った。
パンロンドに戻った修造は、早速スパイスのテンパリングを始めた。
その後修造は肉屋で買った牛すじを取り出した。
まずは硬い牛スジを大きめの鍋に入れ、煮込んだ後雑味を除くために一度湯を捨ててもう一度鍋に入れて生姜と煮込んだ。
始め固かった牛スジは徐々に柔らかくなっていき、
衣をどうするかな。
カレーパンの美味いのはルーは勿論だが、
次の日、サクい食感の生地にスパイスを馴染ませたカレーペストを包み、
それを水溶きの小麦粉と米粉を配合したペーストに潜らせてロース
パン粉は親方自慢の山食パン「山の輝き」をローストしたものだ。
カレーパンを揚げて「親方これ、食べてみて下さい。」と渡した。
「うわー!美味い!」
「このカレーを持って2回戦に挑みます!」
修造は2回戦の前の日、300人分のカレーと牛スジを用意した。
江川はお店から持っていくもの一覧を見て真剣に用意した。「
「修造さん!明日は頑張りましょうね。」
「勿論だ!今日は早く寝ろよ!」
次の日はいい天気だった。NNテレビの広場には沢山の人がイベン
4店舗のブースが並んでいる。
「修造さん、まさかでしたね。」
「
「向こうも驚いてますよきっと。」
1番ブースの田所チームは牛スジカレーパン。2番の那須田チームはクロワッサンサンド。3番佐々木チームは北海道産小麦の食パンにチーズとハムを挟んだクロ
「うろたえてる暇はないぞ!そろそろ揚げる準備をしないと。」
と、そこへ「おはようございま~す!」とやって来たのはNNテレビが用意した販売員のお姉さん達だった。
「
江川には「さあ!どんどん揚げていこう!」と勢いよく言った。
すでに作業中のチーム達の前でロケが始まった。司会の安藤良昌が出てきた。「さあ!
プアーーーン!
合図の音と共に人々はそれぞれ自分の食べたいブースに並んでパン
江川は他のブースを覗いて「うわ!佐久間チームの所にあんなに沢山の人が!
佐久間チームのカレーパンはサラッとした口当たりで食べやすく、
人々は皆メジャーな順に食べて行った。
マイナーなパンロンドは少々不利だ。
修造は手鍋にカレーを入れてコトコト炊いてうちわで仰ぎ出した。
「うわ!いい香り〜、ここに行こうよ。」と言って、並ぶ人数が少し増えてきた。
江川はカレーパンを揚げながら通路を通る人に声をかけた。「
「ちょっと、あの子可愛くない?」と言って並ぶ人も増えてきた。
江川はトレーにカレーパンを乗せて呼び込みをし出した。
「こちらパンロンドでーす。」
「うちの牛すじカレーパンの方に投票して下さいね〜
と、目をキラキラさせて言って回った。
修造はカレーパンを包んだり揚げたりしながら「
江川は一人一人に丁寧に説明して、わざと列を作り、
待たされると美味しく感じるものかもしれない。
他の店はどんな感じなんだろうか?
司会の安藤が中央に出てきた。
「さて!ここで途中経過の発表です!」安藤は4店舗の集計表を見て
うわ、僕たちのチーム4番目だって、頑張らなきゃ。
来場者は3店舗回って結構お腹一杯の人達ばかりになってきた。
江川はカレーパンを渡すとパンロンドの店名が書かれた紙ををお客
江川、そんなことしなくても俺のカレーパンは美味いんだ。
修造は焦らず最適の揚げ方に集中した。
後編に続く